葛西臨海水族園の展示水槽では、それぞれの生き物がくらす環境に近づけて、本来の生態が観察できるように展示を工夫しています。たとえば砂に潜る生き物の水槽では砂を厚く敷いたり、岩穴などに隠れる生き物では岩をたくさん入れて隠れ家を作ったりします。
しかし、もともと動きまわることの少ない生き物が岩陰などに隠れてしまうと、観覧側からは見えず、「展示している」とはいえなくなってしまうジレンマを抱えています。

ワーティプラウフィッシュ
「世界の海」エリアの「オーストラリア西部」水槽のワーティプラウフィッシュ(以下、ワーティ)は、カイメンや海藻が付着した岩肌そっくりに擬態をしてじっとしており、餌を探して泳ぎまわることもほとんどありません。この水槽では以前からずっと展示していますが、観覧側からは見えない“死角”が定位置となり、今年1月に行った展示の手直しまで、ながらくほとんど見ることができない魚でした。
水槽内のアクリルガラスの左右には“死角”があり、飼育水を循環するための配管など、展示上目ざわりとなるものはこの死角におさめて隠しています。展示のワーティは、その配管と壁との隙間が定位置となっていました。
そこで、この死角をふさぐようにアクリル板を設置して中に入れないようにしました。さらにその近くに岩を置いたところ、狙い通りワーティはその岩に寄り添うように定位してくれじっとしてくれるようになりました。こうなると、ワーティの動き回らないくらしが功を奏し、いつでも見ることができる展示となりました。4月中旬にはあらたに1個体追加して、現在2個体を展示しています。
とはいえ、じょうずに岩に擬態しているワーティです。水槽を見てすぐに見つけることはできるでしょうか。ぜひ探してみてください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 児玉雅章〕
(2016年05月28日)