葛西臨海水族園「南シナ海」の水槽は、小型の水槽が並ぶ世界の海エリアでは大きな水槽です。ここには、以前お伝えしたナポレオンフィッシュをはじめ、タマカイ、ドクウツボといった大きな魚類を展示しています。大きなタマカイが悠々と泳ぐ姿に、ほかの魚たちも遠慮気味に道をゆずるように避けています。
メガネモチノウオ(ナポレオンフィッシュ)も負けてはいません。ぐるぐると周囲をかき乱すように泳ぎまわっています。
しかしじつは、タマカイもナポレオンフィッシュもかなわないツワモノがいるのです。
そいつの名は「ハナミノカサゴ」。大きさは30センチメートル程度と小ぶりですが、彼らのことは誰も追いかけたりしません。むしろじゃまをしないように避けて通るようにも見えます。
ハナミノカサゴは背びれや尻びれ、腹びれの長く伸びた棘(きょく)が特徴的な魚です。この棘には毒があり、それもかなりの猛毒で、うっかり刺されると危険です。
派手な体色は、周囲に対して注意を呼び起こす役目も果たしています。そういわれると、茶色と白のゼブラ柄はいかにもヤンチャそうにみえませんか?
ちなみに、ハナミノカサゴは2尾いて、色の薄いのが「ショウ」、濃いめが「リイサ」です。
この水槽では、毎週火・金・日曜日の午後、大型魚の給餌をおこなっています。水槽奥の壁側から手渡しで餌を与えていますが、ふだんは岩の上でじっとしているハナミノカサゴも、このときは壁際まで泳いできて、餌をもらえるのをじっと待っています。そして、そんな彼らを、タマカイやナポレオンフィッシュのような大物が追い払えないでいるのです。
写真上:ハナミノカサゴ
写真下:大きなナポレオンフィッシュにも負けていない
〔葛西臨海水族園飼育展示係 飛田英一朗〕
(2010年09月17日)
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