井の頭自然文化園では2022年から「野鳥の森」でオナガ2羽を同居させ、2023年11月にペアだけで飼育できる「和鳥舎」に移動しました。
第1回のおはなしでは2023、2024年の和鳥舎で飼育するオナガのペアの巣作りについてお伝えしました。今回は、2025年にオナガたちがどのような巣を作り上げたのかをお伝えします。
2025年の取り組み
前年の巣作りの経験を活かして2025年も同じケージで繁殖させようと考えていましたが、1月から4月にかけて和鳥舎の工事のために2羽を一時的に別の場所へ移動させることになりました。2羽がいないタイミングを活かして、巣台となるトリカルネットをケージ内の2か所に設置しました。
1か所は前年に巣を作った壁沿いのより高い場所に、もう1か所は野生の巣の環境に近い木の中に溶け込むような場所にしました。さらに巣台の大きさを、野生の巣の大きさに近づくよう小さくしました。これらは、昨年の経験を踏まえてくふうした点です。

木に溶け込むように設置した巣台(飼育担当者が入れる場所から見た巣台)
さらに、繁殖期(5月~8月)には、メスの給餌量を徐々に増やし、最終的に通常の約3~5倍に増やしました。カルシウム剤を添加し、ふだん与えていない昆虫類も多めに与えて栄養面を強化することで、卵の殻の状態を改善し、産卵で消耗するメスの体力をサポートすることができます。
工事が終了したあと、2羽をケージに戻しました。繁殖期の5月になると、2羽が巣台に枝を集め始めました。選んだ場所は、上の写真で紹介している木に溶け込むように設置した巣台でした。前年は巣の完成までに約2週間かかりましたが、今回は約10日間で完成しました。これは、巣台の大きさを小さくしたことが影響したのかもしれません。
巣が完成してから5日経ったころ、どんな巣ができているのか確かめるためにスコープカメラ(細長いケーブルの先端にレンズのついた小型カメラ)を使って巣を覗いてみました。すると、巣には4つの卵が産み落とされていました。さらに、その2日後にはメスが巣の上に座り、卵を温め始めたのです。

スコープカメラで覗いた巣
野生のオナガの巣は、高さ3~5mほどの木の茂みの中に枝を組んで作られます。飼育下でこの高さを再現することは難しいものの、なるべく落ち着ける場所を、と考えた場所に巣を作ってくれたことは、飼育担当者としてとても嬉しい結果でした。

抱卵中のメス
その後も20日ほど抱卵していましたが、残念ながら卵は孵りませんでした。メスが頻繁に巣から離れることで卵が十分に温められなかったことが要因と考えられます。
前年も同様でしたが、繁殖期はオナガの警戒心がとくに強くなります。抱卵中のメスのようすを記録したところ、職員が少しでも視界に入ると巣から離れ、また巣に戻って抱卵する行動を繰り返しており、1日中落ち着いて卵を抱いていた日はほとんどありませんでした。

抱卵記録(一部抜粋)。30分~1時間おきに抱卵の有無を記録します
20日後に巣の中を確認しました。最初に4卵あった卵は、原因はわかりませんが3卵に減っていました。回収した卵のうち2卵は有精卵でしたが、残念ながら途中で発生が止まっていました。給餌や個体の確認など職員が必要な作業をおこなっていても、オナガが安心して卵を抱いていられる環境作りが次なる課題となりました。

回収した卵
結果は残念でしたが、今回オナガたちは写真のような野生の巣に近い立派な巣を作り上げ、巣の中で産卵し、3つの卵を割らずに抱くことができました。2023年から少しずつ環境を整え、課題を乗り越えてここまでの巣を2羽が作ったことは、提供した環境が間違えていなかったのだと今回の巣作りを見て自信をもつことができました。
オナガの繁殖期は1年に一度しか訪れません。新たな課題に取り組みながら、これからも繁殖を目指してオナガにとってよりよい環境を提供していけるように努力します。

卵の回収後に撮影した巣
〔井の頭自然文化園飼育展示係 寺原〕
(2026年03月02日)