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「川ガキ、しってる? ~水辺で遊ぶ子どもたち~ 村山嘉昭写真展」を開催しています
 └─ 2025/08/23
 井の頭自然文化園の水生物園(分園)にある水生物館特設展会場では、7月21日(月・祝)から8月31日(日)まで「川ガキ、しってる? ~水辺で遊ぶ子どもたち~ 村山嘉昭写真展」を開催しています。写真家・村山嘉昭氏が撮影した、元気いっぱいに川で遊ぶ子どもたちのようすはもうご覧いただけましたでしょうか?

 私たち文化園の職員も、さまざまな想いやこだわりをもってこの特設展にのぞみました。そこで今回は、開催までの裏話をお届けしようと思います。

特設展イメージビジュアル
特設展会場のようす

 「川ガキ」とは、水辺を日常的な遊び場にしている子どものことです。かつては日本中で見られた川ガキですが、すっかり姿を見かけなくなってきました。長年、川ガキを撮影してきた村山氏は、水辺の環境が失われつつあることに加え、人々が水辺に無関心になっていることこそが、その原因だと考えています。

 井の頭自然文化園の水生物館では、今は失われてしまった昔の井の頭池の姿を再現するなど、かつて都内の池でもみられた、豊かな淡水の生態系を伝えることにつとめています。

 身近な水辺の自然の豊かさや美しさ、そしてそこで遊ぶことの楽しさを知って、関心をもってほしい──村山氏の川ガキへの気持ちは水生物館の理念と共通するものがあったため、私たち職員も文化園で開催するからこそ伝えられることがあるのではないだろうか?……と、そんな想いを胸に特設展の準備を始めました。

 吉祥寺の街中にある文化園の近くにも、水遊びができる場所がまだいくつか残っています。そこで今回は村山氏といっしょに、近隣の野川や神田川で、川ガキの写真を新たに撮り下ろすことにしました。

 撮影に集まった子どもたちは次々と水の中に入っていきました。湧き水の冷たい感触を味わう笑顔や、初めて出会う生きものに触れたときの表情、集中し真剣な顔で生きものがいないか探る姿……そのどれもがとても生き生きとしており、自然の中の豊かな遊びを通して子どもたちが培う力が何であるのか、改めて考えさせられました。

 今回撮影した写真は、会場入って右側の壁に展示されていますので、ぜひご覧ください。


野川で撮影中の子どもたちの様子

 会場では写真だけでなく、文化園の近くで安全に遊べる水辺や、川に行くときの注意点、出会うことができる生きものの情報もパネルで紹介しています。文化園をよく訪れるご家族が、特設展を見たあと、川へ遊びに行く際に参考にしていただけるような内容になっています。


制作したパネル

 このパネルで紹介している川遊びのスポットは、実際に現地を見て、ようすを確認しています。楽しそうにすごす子どもたちにつられて、思わず水に触ってみたところ、湧き水がとても冷たく感じました。豊かな水草が水中をゆらぐ景色など、このときの体験が展示の準備中に何度も思い出されました。そんな水辺の魅力を伝えられるよう、試行錯誤を繰り返し、展示を完成させました。


ママ下湧水公園の近くで遊ぶ子どもたち

 展示が始まってから、1か月ほど経ちました。会場のご意見箱にはたくさんのコメントが寄せられています。まず私たちが驚いたのは、多くのお子さまからの「楽しそう」「自分も川に入ってみたい」などの感想が、たくさん寄せられたことです。また、かつて子どもだった大人の方々からの「自分も川ガキだった時代があったなぁ」と懐かしむ声などもありました。

 水生物館では、東京にすむ身近な水生生物を展示していますが、展示を見るだけでなく、実際に自然の中で生きものを探して、発見して、触れてみてほしいと思います。

 動物園の役割のひとつは人と自然をつなぎ、ゆくゆくは「環境を守りたい」という思いにつなげることです。今回の特設展を通じて、川で遊んでみたいと思ったり、水辺の生きものに興味をもったり……そのようなきっかけ作りの場にすることができたならば、とてもうれしく思います。

〔井の頭自然文化園教育普及係 佐々木〕

(2025年08月23日)


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