ニュース
コシジロヤマドリのヒナの成長
 └─2025/03/21
 井の頭自然文化園では、現在オス3羽、メス3羽、計6羽のコシジロヤマドリを展示しています。その中の1羽のメスは、生まれてまだ1年もたっていない若鳥です。今回は、そのメスがヒナから若鳥になるまでの人工育雛の経過についてご紹介します。

 文化園では、コシジロヤマドリの人工繁殖に取り組んでいます。2024年は、孵卵器に入れた5卵のうち2卵が5月12日に2時間差で孵化しました。通常、個体の識別は生まれた日にちや大きさなどでそれぞれを見分けます。しかしヤマドリは、生まれてすぐには見た目での性別判定ができないうえ、今回のヒナたちは生まれてきた日が同じで、大きさもほとんど同じでした。そこで、先に生まれた方の脚に色ペンで横線を引いて「先に生まれた方」「後に生まれた方」と呼んで判別をしていました。

 生まれたばかりのヒナは、「刷り込み」と呼ばれる学習によって、生まれて初めて見る動くものを親だと認識します。本来であれば、卵を産んだ個体が親となるのですが、孵卵器で生まれたヒナの場合、世話をする人や近くにいる他のヒナへ刷り込みがされます。今回は、先に生まれたヒナは人に、後に生まれたヒナは先のヒナに刷り込まれました。


孵化後3日目

 野生のヤマドリは孵化してから半日もたてば親鳥の後ろを必死について歩きます。そのため、飼育下でも充分な運動や筋肉の発達が必要になると思い、できるだけ広い場所で運動をさせて筋肉や脚に刺激を与えられるよう、生後約1か月で育雛箱から止まり木を設置した広い展示場へと出しました。飼育下では運動量が制限されやすく、餌を多く食べ過ぎると体重が増えすぎて、体を支えられなくなり異常に脚が開いて立てなくなってしまうことがあります。また、与えている餌の栄養が偏ってしまうと栄養失調で命を落としてしまったりすることもあります。そういったことにならないように細心の注意を払いながら人工育雛に取り組みました。


孵化後約45日目

 ヤマドリの性別が外見で分かるようになるのは生後2か月辺りからといわれていて、このヒナたちも例外ではありませんでした。日を追うにつれてそれぞれの特徴が表れ、「先に生まれた方」がオスで、「後に生まれた方」がメスだということが確認できました。その後も2羽とも順調に育っていましたが、生後3か月を過ぎた頃にオスは夜間に何かに驚いて頭を打ってしまい、治療とケアに尽力しましたが残念ながら死亡しました。

 オスがいなくなってしまった後、メスの警戒心が増してしまったり、餌を食べる量が減ったりと少し心配になることもありましたが、時間の経過とともにようすが安定していき無事に育ちました。生まれた頃は23gだった体重が、孵化後10か月たった今では成鳥と同じくらいの約700gにまで成長し、安心感のある姿を見せてくれています。まだまだ若いこのメスのヤマドリは、ヤマドリ展示場の左から2番目のケージに展示しています。無事に成長した姿をぜひ見に来てください。


現在の若鳥の姿

〔井の頭自然文化園飼育展示係・寺原〕

(2025年03月21日)


ページトップへ