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インドサイ舎でインドガン繁殖
 └─多摩  2016/08/16

 多摩動物公園ではインドサイ放飼場でインドガンが孵化しました。2016年7月16日時点では9羽のひなが育っています。

 向かって右側の大きな放飼場には、石垣で囲まれ、潅木の植えられたエリアがあります。ここにはサイは入れません。インドガンたちはこの潅木の茂みの深いところを選び、集団で営巣します。

くぼみに産み落とされた卵(2016年5月7日)
抱卵中(5月14日)

 昨年(2015年)、ここで初めて6羽のひなが育ちました。今年も4月下旬、つがいで行動するインドガンが現れ、産卵が始まりました。地面にくぼみを作って1個ずつ産卵し、4個になると抱卵を始めますが、巣のないところに産み落とされ、転がっている卵も見られます。

 5月になると抱卵するつがいが徐々に増え、昨年の7つがいを超えて、5月末には11羽のつがいが抱卵するようになりました。本格的な抱卵が始まると、くぼみに作られた巣には羽毛が敷かれ、その量も増えていきます。抱卵はメスが担当し、オスはそばに寄り添って見張りをしながらカラスなどから巣を守っています。

 卵は29日前後で孵化します。5月27日、最初のひな3羽が孵化しました。その後、6月17日までに合計5つがいからひなが孵化しました。残りの6つがいの卵は孵化しなかったようです。

えさを食べるひな(6月5日)
親子でえさをついばむ(6月25日)

 ひなが生まれると、親鳥はひなを連れて営巣地の潅木の茂みから放飼場に出てきます。親鳥が小松菜や粒餌を食べると、ひなも続いて地面のえさをついばみます。そしてプールに移動し、水を飲んだり、初泳ぎをしたり。その後、安全な灌木の茂みに戻り、周期的に出てきます。

 その後、成長とともにひなの動きも活発になります。ひなが先を歩き、親鳥がついて行くこともありました。ひな3羽と両親がいっしょに散策しているときには、ひなが離れると、両親の一方が「持ち場」を離れず、もう一方の親鳥がひなを追いかけ、ふたたび合流します。

 インドガンはサイの動きをよく観察し、安全な間合いを取って動きますが、慣れてくるとサイのいるプールに入ったり、サイが食べているすぐそばで青草や乾草を食べていることもあります。

プールに入るインドガン親子(6月10日)
インドサイとインドガン(6月17日)

 サイはふだんインドガンを気にしていないのですが、ある日、インドガンの親子がプールで泳いでいると、後からオスのサイ「ビクラム」がプールに入ってきました。親鳥が警戒の声を盛んに出すので、かえってビクラムの気にさわり、ガンを追い回し始めました。親鳥はすぐに陸へ避難しましたが、取り残された3羽のひなはいっせいに水中へ分散して潜ります。ビクラムが激しく動くので大きな波が立ちました。

 ひなが潜水を繰り返して体力消耗すると陸に上がれなくなってしまいます。そこで、カシの枝を差し出してビクラムを呼んでプールから上がらせておき、プールに戻って来ないうちに、ひなを網ですくって陸上へ移しました。

 6月下旬になると、営巣地には抱卵するペアもいなくなり、親子も放飼場に出ていることが多くなりました。その後の成長は著しく、7月になると最初に生まれたひなは親鳥に近い大きさになっています。これでインドサイ舎のインドガンは50羽の群れになりました。

〔多摩動物公園南園飼育展示係 小島善則〕

(2016年08月16日)


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