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Z o o E x p r e s s ■ ズー・エクスプレス ■ No.299 - 2006年12月01日
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・都立動物園の最新情報をお届けするメールマガジン「ズー・エクスプレス」。
・モリー、「飛び地」に渡るの巻。
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ぶつと動物園」を年4冊お届けします。入会・継続の手続きは、クレジット
カード&オンラインでもOK! → http//www.tokyo-zoo.net/member/
■目次■--------------------------------------------------------------
・東京ズーネットBB
└─11月の動画も大公開!
・多摩動物公園
├─オランウータン「モリー」のスカイウォーク
├─シンガポールからサーバル来園
└─アムールトラ「イチロー」死亡
・葛西臨海水族園
└─世界中の、そして日本のカエルが危ない!──ツボカビ症
・井の頭自然文化園
├─オシドリ[文化園四季折々]
└─紅葉の文化園
・書籍紹介──叶内拓哉著『野鳥と木の実ハンドブック』
■東京ズーネットBB■==================================================
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▼11月の動画も大公開!
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東京ズーネットBBは、動画でお伝えする動物園ニュース。「東京ズーネッ
ト」 http://www.tokyo-zoo.net/ のトップページから、「TokyoZooNetBB」
をクリックしてください。
◎動物園よりお知らせ
【ツシマヤマネコ、井の頭に来園】──────────────────
下記ニュースでお知らせしたツシマヤマネコが、ついに井の頭自然文化
園に来園! 自然に戻すため、非公開で飼育しますが、到着時のようすと、
飼育室での2頭の表情をびでおいでごらんください。
http://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=&link_num=5630
◎うごく!どうぶつ図鑑
【アイアイの「おやつ」の時間】───────────────────
上野動物園のアイアイ「フアーヴィ」の食事風景。アイアイは前足の第
3指が長く、木の中にいる昆虫をひっぱりだして食べることもできます。
そのユニークな行動を見ていただこうと、飼育担当者が開発した特別性の
餌容器。さて、どんな食べ方を見せてくれるでしょうか……?
【ミニブタと記念撮影】───────────────────────
上野動物園では、2007年の干支「イノシシ」にちなみ、年賀状用に「ミ
ニブタ」2頭といっしょに記念撮影ができるコーナーを子ども動物園の中
に設置。イノシシはブタの祖先種です。2頭の名前はユキとテル。思うと
おりのポーズをとってくれないかもしれませんが……。
【カンムリエボシドリ再繁殖】────────────────────
井の頭自然文化園では、2006年6月にカンムリエボシドリが孵化、7月
に1羽が巣立ちました。国内初の繁殖でした。そのカンムリエボシドリが
9月にふたたび抱卵開始。10月2日に孵化しました! しかも2羽!
【カピバラ親子で登場】───────────────────────
上野動物園でカピバラが親子で放飼場に出ています。オス親はしばらく
前から、ラマ、アメリカバクもいる放飼場に出ていました。そこに、オス
の子ども「レモン」(7月生まれ)が登場。子どもがプールにシュパッと
入っていくシーン、走るシーン──カピバラらしさを発揮中!
【キンカジュー来園】────────────────────────
今年(2006年)の8月、上野動物園小獣館にキンカジューのメスが来園。
現在、2歳。キンカジューは片手でしっかり餌をつかんで食べることがで
きます。枝にお腹をつけたまま、前半身をぶらさげて「たれキンカジュー」
状態で餌を食べるのはナゼ。
※「東京ズーネット」のモバイルサイトでも、動画を公開しています(約30
秒)。動画再生対応機種でごらんください。アクセス先は、パソコン版と
同じく、 http://www.tokyo-zoo.net/ です!
■多摩動物公園■======================================================
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▼オランウータン「モリー」のスカイウォーク
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昨年(2005年)11月9日に上野動物園から多摩動物公園にやってきたオラン
ウータンのモリー(推定54歳、メス)は、当初、第3放飼場に1頭だけで出て
いましたが、室内ではジュリー(41歳、メス)が見える部屋ですごし、移動用
通路などではジプシー(推定50歳、メス)とオリ越しに見合いをするチャンス
もありました。
モリーも多摩に来てすでに1年。かなり慣れてきたようなので、広い第1放
飼場や、室内の第2放飼場にも出して、生活範囲を広げるように心がけてきま
した。2006年11月15日には、第1放飼場でジプシーと初めていっしょにしてみ
ました。
モリーは左目が不自由で、右目も指を使って自分でまぶたを持ちあげないと
見えないのですが、ふだんから動きは速く、高いところにあるロープでもスイ
スイと渡るようになりました。遠くにいるジプシーに近づいていくスピードと
きたら、若い個体も顔まけです。ジプシーがモリーから急いで逃げようとする
ので、まるで鬼ごっこのような状態になってしまいます。
第1放飼場のゆれるロープが渡れるのなら、スカイウォーク(高さ約15メー
トル、長さ約 150メートル)のしっかりしたロープぐらい簡単だろう──そう
考え、11月23日にモリー1頭にスカイウォークをさせてみました(スカイウォ
ークは11月16日から中止していますが、気温などの状況に応じておこなってい
ます)。
午後1時30分、さっそく最初のタワーのてっぺんまで登ったモリーは、しば
らくまわりの景色を楽しんでいるようすでしたが、ロープをさわってようすを
確かめ、第2タワーに向かって渡り始めました。途中で止まって、片目でまわ
りを確認しつつ進んでいきます。ゆっくりと進んで第7タワーまでくると、ロ
ープを離れて台の上に座りこみ、その後、戻るようなそぶりも見せましたが、
午後3時をすぎて、最後の第9タワーに到着。
最後のタワーは、植物の生える放飼場(飛び地)へと降りていけるようにな
っています。ところが、なかなか降りてこないので私がモリーの名前を呼ぶと、
ゆっくりと降りてきました。子どものころから50年以上も草木の感触を味わっ
ていなかっただろうモリーがのんびりと飛び地で横になっているすがたを目に
して、モリーを20代のころから知っている私は感無量でした。
4時をすぎてモリーは飛び地にある寝室に入り、不安なようすも見せずに、
すぐ夕食を手をつけ、その後はゴロンと横になって休んでいました。
その後3日間、モリーは飛び地と寝室で生活を続け、いろんな植物を観察し
たり、草を食べてみたり、とても楽しそうに見えました。枝を折ってみたり、
樹木を触ったり、好奇心も旺盛です。
すっかり飛び地が気に入ってしまったモリーですが、飛び地には冷暖房施設
がありません。この時期は最低気温が6℃にまで下がるため、11月26日には輸
送箱に入ってもらい、午後3時ごろ、軽トラックでオランウータン舎に運びま
した。4日ぶりの自室でモリーはいつもどおりすぐ餌を食べ、床暖房のきいた
部屋のベッドで、イビキをかきながら寝てしまいました。元気そうなモリーに
一安心です。
〔多摩動物公園飼育展示課 黒鳥英俊〕
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▼シンガポールからサーバル来園
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多摩動物公園にシンガポール動物園からサーバルがやってきました。2002
年12月2日にシンガポール動物園で生まれたオス。シンガポールから来たの
で「ポール」と名づけました。
ポールが到着したのは2006年10月13日です。11月4日に検疫(健康チェッ
ク)を終え、サーバル舎へやって来ました。ポールは警戒心が強く、やや臆
病な性格のようなので、1か月かけて環境にならしてきました。12月から、
みなさんの前にお目見えします!(2~3日おきに展示する予定です。)
ポールは今まで多摩にいたサーバルたちと顔つきや模様が少し異なり、顔
に小さな斑点がたくさんあります(写真は東京ズーネットのニュースページ
をごらんください http://www.tokyo-zoo.net/)。また、来園した時からポ
ールの両耳には切れ込みがありました。
警戒心の強い個体なので、最初は木陰に隠れていたり、放飼場の隅にいた
りすることが多いと思います。ポールのすがたを注意して探してみてくださ
い!
〔多摩動物公園飼育展示課 市丸奈津子〕
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▼アムールトラ「イチロー」死亡
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2006年11月24日(金)午後4時、多摩動物公園のアムールトラ「イチロー」
が急性腎不全で死亡しました。
イチローは、ビクトル(オス)とアシリ(メス)ペアの第2子として2004
年8月8日に多摩動物公園で生まれました。(2003年5月26日に生まれた第
1子のオス「センイチ」は現在、大阪市の天王寺動物園にいます。)
生後10か月ごろよりイチローにてんかん発作が見られるようになり、多摩
動物公園では状態を見ながら投薬を続けていました。ところが、最近状態が
悪化し、11月22日には大きな発作を起こしてしまったのです。投薬による治
療をおこないましたが、残念ながら回復せず、11月24日の午後4時に死亡し
ました。
これまでイチローを見まもり、応援してきてくださった方々にお礼申し上
げます。現在、多摩動物公園のアムールトラは、ビクトル(オス)、アシリ
(メス)、そして、2006年6月16日に生まれたメス「シズカ」の3頭となり
ました。
■葛西臨海水族園■====================================================
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▼世界中の、そして日本のカエルが危ない!──ツボカビ症
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2006年11月24~25日、神奈川県横浜市で第18回日本動物園水族館両生類爬
虫類会議が開催されました。ホストは野毛山動物園です。日本動物園水族館
協会が後援するこの会議は、上野動物園の両生爬虫類館(ビバリウム)が事
務局をつとめ、運営しています。
今回の発表は8演題。葛西臨海水族園は「人工の水辺環境における管理手
法の試みについて」、井の頭自然文化園は「東京産イモリの域内・域外保全」
について発表しました。
会議の検討課題として、世界各地で蔓延し始めている「ツボカビ症」につ
いて、天王寺動植物公園の高見一利さんや、先日ドイツで行われたCBSG(保
全繁殖専門家グループ)の会議に出席された安佐動物公園の桑原一司さんか
ら報告がありました。
世界の両生類 5,743種のうち、2,469種(43%)は生息数が減少し、1,856
種(32%)に絶滅の恐れがあり、120種が 1980年以降絶滅したと推測されて
いるそうです。絶滅を加速させている原因の一つに、「ツボカビ症」があげ
られています。
ツボカビ症は致死率が高く(90%以上)、伝搬性が強いため、世界中で猛
威をふるい、すでにオーストラリアや中米の両生類が壊滅的打撃を受けてい
ます。このため、オーストラリア農水省では、輸出入に関して法律・検疫を
強化するなど、国をあげて対策に取り組んでいます。
ツボカビ症が確認されていないのは、これまでアジア地域のみとされてき
ましたが、2005年にタイで確認され、日本への侵入も懸念されています。日
本では十分な法的な対応もなく、水際で阻止するためのきびしい検疫や規制
の整備も遅れています。
日本のカエルは固有種の割合が高いため、絶滅したら回復はできません。
後世になってもカエルの鳴き声が聞けるよう、「ツボカビ」の侵入を阻止し
なければなりません。
※英文ですが、くわしくは CBSG のサイト http://www.cbsg.org/ から、
Amphitiban Decline(両生類の危機)をごらんください。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 杉野隆〕
■井の頭自然文化園■==================================================
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▼オシドリ──文化園四季折々
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井の頭自然文化園は本園と分園に分かれています。分園には淡水魚を飼育
している水生物館があり、屋外ではたくさんのガンやカモのなかまを飼育し
ています。当園では1988年からオシドリの飼育に力を入れ、繁殖した個体を
井の頭池に放してきました。
オシドリは国内では北海道から沖縄まで生息や繁殖の記録があります。北
日本では冬は南に渡ってしまったり、一方、西日本では元々いた個体に加え
て、北日本や大陸から遠く飛来したりします。文化園で放されたオシドリは
関東各地に分散しているようですが、1979年9月に多摩動物公園からオシド
リ9羽に標識をつけて放したところ、1981年9月にオス1羽が1300キロ北の
ロシア国内、ウスリー川付近のプリモルスキーで回収されました。
人とオシドリとのかかわりは古く、記録上、中国で2500年、日本では1200
年の歴史があるといわれています。「をし」や「をしどり」の名で、古くは
万葉集や日本書記、新撰和歌集などから現代まで、広く文人に愛されて和歌
や俳句に詠まれてきました。「池水にをしの剣羽そばだてて 妻あらそいの
けしきはげしも」──この歌は新撰和歌集に見られるもので、すでにオシド
リの生態が把握されていたことが分かります。古くからオシドリは夫婦のき
ずなが強く、仲のよい鳥だといわれてきました。人間でも「おしどり夫婦」
「鴛鴦(えんおう)の契り」などと夫婦仲のよさを言いあらわしたりします。
ただし、繁殖期以外のオシドリの雌雄の行動には諸説唱えられています。
オシドリの特徴はオスの鮮やかな羽色です。カモ類としては小型ですが、
白い顔と赤いくちばし、頭上から後頭部に伸びた虹色の冠羽、首に栗色の筋
状のひげ羽、腰に垂直に立った赤褐色の銀杏羽と、他種とまちがえようがあ
りません。
メスは全身が暗い灰褐色で、胸からわき腹に灰白色の斑紋がある地味なす
がたです。オスも6月ごろ羽毛が生えかわってメスと同じような羽色になり
ますが、オスはくちばしが赤く、メスは黒っぽいことで区別できます。10月
ごろになると、ふたたび羽毛が生えかわり、オスは美しい羽色を見せるよう
になります。オスの派手な色は、メスから配偶相手として選んでもらうため
のものです。夏から秋にかけて、こうした変化を文化園では楽しめます。
〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 宮路良一〕
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▼紅葉の文化園
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山の紅葉がおさまるころ、平地に鮮やかな季節がやってきます。一般に紅葉
は、寒暖の差がはげしく、日の光がよくあたるほど鮮やかな色になるといわれ
ています。今年の秋は暖かく、紅葉は例年ほど鮮やかではないようですが、井
の頭自然文化園でもイロハモミジ(イロハカエデとも)が真っ赤に染まってき
ました。
例年、紅葉のピークは12月の第1週あたり。いま一番の見ごろを迎えている
のは、ヤマドリ舎の裏や熱帯鳥温室近く、それに分園ハクチョウ池近くの木で
す。ほかにもイチョウやイヌシデ、ラクウショウの葉が赤や黄に変わり、園内
は1年でもっともカラフルな季節を迎えています。
■ B O O K S ■=======================================================
『野鳥と木の実ハンドブック』
叶内拓哉著、文一総合出版、2006年11月27日刊
本体1,200円、ISBN4-8299-0024-5
木の実を「赤」「黒」「紫と黄」「茶と白」の色でわけ、やってくる鳥を
文章と写真で解説した小図鑑。11×18cm、80頁とコンパクト。実の表皮が青
くても、はじけて赤くなるのなら「赤色の実」に分類されているのは、鳥の
目で見ているからでしょう。
目立つ実ながら鳥が食べない木も、確認のために掲載されています。巻頭
に、「私は植物学者ではないので、植物図鑑を書いたつもりはなく、主役は
あくまでも野鳥である」とありますが、それでも著者は、9年間植木屋で働
いていた、植物の専門家。
基本的に1ページに樹木1種。写真は実のアップ、採食中の鳥、木の遠景
の3点が配され、樹木の特徴、結実期、やってくる鳥などが簡潔にまとめら
れており、著者が口にしてみての感想も添えられています(ただし、毒性の
ものもあるので要注意)。
巻末に鳥の来る庭造り等が簡単に解説されていますが、植木屋さんだった
著者ならでは説得力。この時期、鳥と樹木の両方を楽しむのに最適です。
・文一総合出版 http://www.bun-ichi.co.jp/
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N E W S C L I P S
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●東京・丸の内地下道にハイビジョンで旭山動物園登場
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0611/30/news057.html
●米アトランタ動物園、ジャイアントパンダ赤ちゃんにオンライン命名投票
10の候補(候補ごとに“スポンサー”あり)から選ぶ方式
http://www.ajc.com/living/content/living/panda/pandapage.html
最近の赤ちゃん身体検査中ビデオ
http://www.ajc.com/news/mplayer/m/6161
写真6点スライドショー(最初に「skip ad」をクリック)
http://lpe.ajc.com/gallery/view/living/1106/panda1130/
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▽編集後記
・先週号のモルモットのうんちのかたちで、「メスのフンは、たしかにバナ
ナのように曲がったかたち」とあるのは、「オス」のフンです。失礼しま
した。不忍池を30周してきます……。
・いつのまにか12月。ヘロヘロなときもメールで生き返っております。日々
寒くなってきましたので、みなさんも体調にはお気をつけください。
(大平)
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メールマガジン ZooExpress No.299 - 2006年12月01日
財団法人 東京動物園協会
110-0007 台東区上野公園9-83 上野動物園内
電話 03-3828-8235 FAX 03-3828-8237
e-mail: webmaster@tokyo-zoo.net
URL : http://www.tokyo-zoo.net/ 東京ズーネット
携帯サイト: http://www.tokyo-zoo.net/ (PC版と同じです)
(c)2006 Tokyo Zoological Park Society
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